研究課題
本研究では、若年労働市場において転職行動がその後の賃金プロファイルにどのような影響を及ぼすかについて、計量経済学的に分析を行うことを目的としている。昨年度は、主に2つの点に着目して研究を行った。まず、職種を特定し、若年労働者の現状を把握した。そこでは、近年、高齢化の進行に伴い急速に需要が高まっている社会保障・福祉関連の職種に着目し、大量の個票データを用いて分析を行った。そこでは、勤続年数の賃金に対する影響が雇用形態によって異なることや、事業所の形態により正社員の賃金が有意に異なることが明らかになった。また、2点目として、兵庫県下における若年労働市場の実態を分析した。特に、非正規で働く若年労働者の転職意向を把握するため、兵庫県下の個票データを分析した結果、男女ともに非正規労働者の正規職への転職意向が強いことが確認できた。そこでは、性別、婚姻状態や家族構成によってその意向が変化することや、雇用形態による差も確認した。本年度は上記の結果を活かし、賃金プロファイルに強く影響を及ぼす勤続年数について、職種や企業形態による影響を考慮し、さらに勤続年数を内生変数とするようなモデルを構築し分析を行う。勤続年数を内生変数とすることにより、転職した年齢や転職する際の動機付け、及び転職後の昇進の可能性を考慮した分析が可能となる。また、3月に発生した東日本大地震の影響により、少なからず若年労働市場の形態は変わるものと予想される。阪神大震災の際の状況も考慮し、この点に関する分析も試みる。
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Research Institute for Economics and Business Administration, University of Hyogo
ページ: 1-32
商大論集
巻: 61 ページ: 119-149