研究課題/領域番号 |
22530237
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 飛鳥 東北工業大学, ライフデザイン学部, 准教授 (90513060)
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研究分担者 |
渡部 順一 東北工業大学, ライフデザイン学部, 教授 (00342460)
阿部 敏哉 東北工業大学, ライフデザイン学部, 教授 (10231961)
穴澤 正宏 東北工業大学, 工学部, 准教授 (60337194)
沢田 康次 東北工業大学, 工学部, 教授/学長 (80028133)
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キーワード | 地域経済 / 企業生態学 / 中小製造業 |
研究概要 |
宮城県の地域製造業を緩やかな横連携を通して活性化するため、平成23年度は(1)宮城県自動車関連産業のデータ収集、(2)自動車産業先進地域の事例調査(企業間連携、教育連携、産業構造)、(3)数理モデルを検討した。 (1)東日本大震災での被害状況、東日本大震災における宮城県産業への影響をまとめた後、前回取り上げた優良企業がどう乗り越えたかを調査し比較検討した。 (2)愛知県を対象に、県庁、豊田市内自動車関連製造業、宮城県の産業立地センター等を回り、震災以降の受注量の増減や調整、各組織の対応を伺った。宮城県をトヨタの国内第3拠点にというスローガンを達成するという方針は関連企業に多大な影響を与えている。愛知県内の複数組織でtier1以降の川下企業の動向について類似した予測を立てている。円高による利益圧迫によって国内製造業の空洞化が懸念されているが、比較的に労務コストをはじめ誘致関連減税や土地取得価格などが低く、新規展開に向いているという誘導施策を展開している東北で、トヨタのtier1,2が今後の中国・インド・インドネシアに進出できる体力があるかどうか?ない場合には東北まではこられるか?という判断でtier構造が変化するという。震災直後の生産中断で先延ばしになった需要分で現在は前年度比プラス傾向にあるが、その後の見通しは明るくなく、注意深く宮城県内の動向を見守る必要がある。 (3)基礎モデルは概念的な内容に主眼が置かれていたため、改良を加えて企業間連携の効果を解析することできるモデルを改めて構築し検証した。複数の中小企業が1つの大企業からの受注を元に会社を運営している状況で、中小企業が同じ製品を受注している場合は競合関係である。2つの中小企業が互いに競合関係にある場合とない場合に企業間に協力関係を導入したときの効果を数理モデルに基づいて解析し、この効果の大きさがどのような条件に依存しているかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
優良中小製造企業3社のケーススタディから結論を論じるにあたり、2011年3月11日に発生した東日本大震災という東日本一帯に甚大な被害をもたらした特別な事情があり、当該優良製造業者が事業の復旧・復興に追われることになった。そこで、先に事例研究を行いその調査事例を公表している企業AからDのうち計3社について再度ヒアリング調査を行い、東日本大震災以前と以後の状況を検討することにより我々が企図している「企業生態学」を構築する研究が、正鵠を得ているかどうか論証を加えた。
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今後の研究の推進方策 |
今回の震災は乗り切ったが、宮城県内の産業構造の中で受発注関係が切れてしまい、今後同じように取引できるのか、あるいはこれを機に海外に移転してしまう、海外企業にシフトしてしまう取引先が出てくるかについては注意深く様子を見ていく。自動車産業の行く末については、東北を日本の第3工場と標榜するトヨタをはじめとする各社の動向が鍵である。既存の取引関係の中に切り込んでいくことの難しさはインタビュー対象企業が最も理解していることであり、各社ともマッチング支援事業や新規取引先開拓のための展示商談会等にも積極的に参加している。こうして獲得した技術力やネットワークを活用し、受注を待つのではなく、提案型の製品作りを可能としている。こうした視点からも、「企業生態学」により、ゆるやかな横連携が中小製造企業の生き残りに及ぼす好影響を示し、宮城県の産業界に提案していく。数理モデルについては中小企業間の連携(協力)が生み出す相互発展の効果を数理的に考察するために、モデルを構築し基本的な解析を行った。今後は企業間の競争や協力について考察する際に、現実を反映したモデルとして利用できるように基本モデルを改良する。
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