先行研究で指摘されていた「病床数を減らすことで医師の生産性が上がり、それによって平均在院日数を短縮できるため、医師数はそのままで退院患者を増やすことが出来る」という仮説について実証的に検証を行った。結果は、仮説に否定的なものであった。病床数を減らすことによって、同じ事だが、病床当たりの医師数を増やすことによって、確かに在院日数を短縮し、病床当たりの退院患者を増やすことは出来る。しかし、この効果は病床減の効果を補って退院患者を増やすほどでは無いといえる。 具体的には、DPC対象病院のデータを用いて、平均在院日数の医師密度弾力性を計測した。医師密度とは、病床当たりの医師数である。仮に、この弾力性が1より大きければ、病床を減らして医師密度を上げることで、単位期間の医師1人あたり退院患者数を増やすことが出来る。「医師1人あたり退院患者数 × 医師数」が単位期間の退院患者数になるので、弾力性が1より大きければ現状の医師数でより多くの退院患者を出すことが出来るのである。 しかし、実証分析の結果は、病床減により平均在院日数を短く出来るものの、平均在院日数の弾力性は0.3程度であり、1より小さいというものであった。現状では、病床数を減らすことで確かに患者の在院日数を減らすことは出来るものの、その在院日数減も病床数減を補って退院患者数を増やせるほどでは無いと言うことが出来る。この実証分析について論文「病床数削減による医師不足解消は可能か?」を執筆中である。
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