家母長制国ラオスにおいては、壮年期男性の食料消費の家計所得弾力性が高く、老年期家族構成メンバーのそれが低いという結果を得た。また、各年代を通じて、男性メンバーの食料消費の家計所得弾力性は女性メンバーのそれよりも高い結果を得た。既存文献では、家計内の地位が低い家族構成メンバーは、家計内でバッファーの役割を果たすため、食料消費の家計所得弾力性が高くなるとの議論が優勢である。しかし、今回ラオスのデータを分析して得られた結果が、ラオスが家母長制国であることが理由で、家計内での男性の地位が女性の地位よりも低いためと結論付けるのは短絡すぎる。実際、今回の研究で用いた理論モデルにおいては、効用関数と生産関数の形状によっては、家計内で、より生産性が高く、地位が高いメンバーの食料消費の家計所得弾力性が、他の被扶養家族メンバーより高くなることは、理論上十分あり得ることを見つけた。
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