研究課題/領域番号 |
22530246
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
岑 智偉 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (30340433)
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キーワード | 幸福度 / 生活満足度 / zero-sum life goals / non-zero-sum life goals / family-oriented life goal / altruism-oriented life goal / success-oriented life goal |
研究概要 |
本研究の目的は、近年人々が感じている格差感の一因を明らかにし、その縮小に成果をあげることができる資源の再分配政策について、理論・実証両面から分析することである。さらに、海外の事例と比較を行うことである。 本年度は、格差感を表現する方法の一つとして、幸福度と生活満足度という観点に着目して研究を行った。これは、どのような要素により人々は幸福を感じるのか、また、生活の満足を感じるのかということを明らかにするためである。このため、シンガポールと日本で同じ経済学を専攻する学生に対してアンケート調査を行った。海外の事例として、シンガポールで調査を行った理由は、第1に所得水準が同程度であること、第2に同じくアジアの国であること、第3に多様な民族が共生しているシンガポールに対して、まだ外国人の受入に慎重な日本を比べることにより、多様な価値観の存在が影響を与えるかどうかを知ることができるということにある。 得られたデータに基づいて、Ordered probitモデルを用いて推計を行い、シンガポールでは、人生の目標達成が幸福であり、生活の満足をもたらすものであるのに対し、日本においては、人生の目標達成は幸福であるが生活の満足をもたらすものではないという結論を得た。この違いには、当然、文化の違いがあると考えられるが、それに加え、既に日本においては、努力し、目標を達成しても、思うような生活ができない可能性があることを大学生が認識しているということをも示していると考えられるのであろう。この結果は、共同論文としてまとめ、Singapore Economic Review Conference (SERC)2011,4-6 Augustにおいて報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
格差感については、先行研究との比較のため、幸福度の観点からシンガポールと日本でアンケート調査を行い結果の比較を行った。これらを国際学会、国際ワークショップで報告できたため当研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究成果を国際専門雑誌に投稿して出版を目指す。このため、これまでに行った報告で得られたコメントを元に論文の再検討を行う。 一方、公共サービスや社会保障制度が格差感に与える影響に関するデータ調査は、当初の計画通りに行かず今後の課題となる可能性がある。この問題から理論・実証共に研究を進める上での工夫が必要であると考えられる。対応策として、これまで行った研究から幸福度に影響を及ぼすものを効用関数に取り入れて理論モデルの再構築を試みるなど研究を進めている。こうした工夫により当初の計画を達成できるように努める。
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