研究概要 |
糖尿病や高血圧の危険因子である肥満症に対して、効果的な治療法の一つに減量手術がある。減量手術の経済効果に関する事例の検討は少なく、日本の症例に基づいた研究は無い。本手術はわが国では保険収載されていないが、本研究では自由診療および先進医療で治療を行っている二つの医療機関で実施された減量手術の合計55症例に基づき、術後のフォローアップの際に実施した後向きのアンケート調査の回答により、手術の前後で医療費及びその他生活全般にかかる費用の変化を定量的に示した。手術前後では医療費、食費などを含んだ費用の総額は、二医療機関でそれぞれ平均一人当たり41,625円/月、63,552円/月減少したことが示された。 また、仮にこの減少額が不変であったと仮定した場合には、術後それぞれ16か月、2年8か月で個人が手術に対して支払った費用が回収されることが示された。項目別には、食費の減少幅が最も大きく減少額全体の約50%を占めた。 これらの結果により、減量手術による費用の変化には個人差が存在するものの、平均すると短・中期的には費用節減へとつながる可能性が示唆された。
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