本研究は主に次の4つのテーマに焦点をあて、途上国における貧困問題への対策に取り組んでいる。1)アフリカにおける高い成人死亡率(HIV/AIDS等による)の貧困に対する影響、2)マイクロ・ファイナンス(小規模ローン)の貧困削減効果、3)アフリカにおける「緑の革命(農業生産性の飛躍的向上)」の実現可能性、4)国際援助によるインフラ整備事業の経済効果。以下、テーマ別に当該年度の研究成果の概要を記す。1)アフリカにおけるHIV/AIDSの広がりは、結果として孤児の増加につながり、そして孤児の教育問題は国際的にも大きな課題となっている。一方で、アフリカでは大家族制の下、孤児の就学がどのような要因で決定されているか未だ十分な理解が得られていない。今年度は、昨年執筆した博士論文をより精密化し、孤児の就学メカニズムの解明を進めた。2)マイクロ・ファイナンスは貧困削減に対し有効な施策として有望視されている。しかし同時に多くの課題があることもわかってきている。今年度は、マラウィにおいてマイクロ・ファイナンスが児童労働を増加させていると指摘した論文が4月に公刊された。その後は、家計の脆弱性に与える影響についての研究を進めている。同時に、インドでも同様の研究を進めているが、近日中に結果をまとめたい考えである。3)アフリカにおける農業生産性の研究については、政策研究大学院大学の研究グループがウガンダで実施した実験に基づくデータを用い、人々の時間やリスクに対する選好を考慮した分析を行っている(現在、博士論文の副査を担当)。4)インフラ整備事業に関する研究については、JICA研究所と協力しつつインドネシアで収集したデータの整理と分析の準備を進めている。具体的なテーマとしては、灌漑システムへのアクセスの有無が経済成長のプロセスにどのような違いをもたらすについての分析を担当することになっている。
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