研究課題/領域番号 |
22530248
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
島村 靖治 立命館大学, 経済学部, 准教授 (50541637)
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キーワード | 貧困削減 / 開発経済学 / 国際協力 / HIV/AIDS / マイクロ・ファイナンス / 教育 / 児童労働 / アフリカ |
研究概要 |
本研究は主に次の4つのテーマに焦点をあて、途上国における貧困問題への対策に取り組んでいる。1)アフリカにおける高い成人死亡率(HIV/AIDS等による)の貧困に対する影響、2)マイクロ・ファイナンス(小規模ローン)の貧困削減効果、3)アフリカにおける「緑の革命(農業生産性の飛躍的向上)」の実現可能性、4)国際援助によるインフラ整備事業の経済効果。以下、テーマ別に当該年度の研究成果の概要を記す。1)アフリカにおけるHIV/AIDSの広がりは、結果として孤児の増加につながり、そして孤児の教育問題は国際的にも大きな課題となっている。一方で、アフリカでは大家族制の下、孤児の就学がどのような要因で決定されているか未だ十分な理解が得られていない。今年度は、昨年執筆した論文をより精密化し、孤児の就学メカニズムの解明を進めた。2)マイクロ・ファイナンスは貧困削減に対し有効な施策として注目を集めている。しかし同時に多くの課題があることもわかってきている。昨年度は、マラウイにおいてマイクロ・ファイナンスが児童労働を増加させていることを指摘した論文を公刊。そして今年度は、家計の脆弱性に与える影響についての分析を進めた。マラウイでの研究とともに、インドでも同様の研究を進めている。今年度は、インド農村地域で収集した大規模な家計データを分析することで幾つかの新たな発見があった。来年度はそうした発見を論文にまとめていきたい。3)アフリカにおける農業生産性の研究については、政策研究大学院大学の研究グループがウガンダで実施した実験に基づくデータを用い、人々の時間やリスクに対する選好を考慮した研究に参画。博士学生の論文審査において副査として助言も行った。4)インフラ整備事業に関する研究については、JICA研究所と協力し、インドネシアで収集したデータを分析、論文の執筆、研究会や学会等での発表を行った。具体的には、食料価格の急激な上昇や旱越等の自然災害の発生に際し、灌概へのアクセスの有無がどのような結果の違いをもたらしたかについての研究を行った。更に今年度は、JICA評価部でも専門員として活動し、モロッコにおける道路整備事業、ザンビアにおける地下水を利用した給水計画などのインパクト評価実施の支援も行った(来年度も継続)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体として、論文の執筆作業にやや遅れが生じている。その大きな理由は、今年度よりJICA評価部でも活動を開始したことが挙げられる。これまで携わってきた調査に加え、新たに多くの案件に関わることになった。そのため、新規案件の調査デザインや実施支援などに多くの時間が割かれ、これまでの研究成果のとりまとめに費やすことのできる十分な時間が確保できなかったことが大きな理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は来年度が最終年度である。今年度新規に携わることとなった案件は、来年度5月実施予定の調査(ザンビア)で一区切りがつく。以後は、時間配分を見直し、本研究課題で提案していた調査の研究成果のとりまとめに注力したい。
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