本研究は、地方公共団体の生産・費用構造を分析し、その生産性や効率性を明らかにしようとするものである。公共的な企業の民営化・規制緩和は世界的な潮流であり、民営化・規制緩和による生産性の変化を十分に分析する必要がある。現在、民営化・規制緩和の動きは地方公共団体の業務にまで及んでいる。そこで本研究では地方公共団体そのものの、業務の生産性分析を行うことを目的としている。 研究代表者はこれまで、公益事業や地方公営企業に関して生産・費用構造の分析を行ってきた。本研究では、これらの経験と開発した手法を用いて、地方公共団体を「企業に類似したある組織体」と見た場合の、生産・費用構造を分析することを目的としている。 平成22年度にはその第1段階として、研究代表者にとって"土地勘"のある、兵庫県内の市町村の地方公共団体のパネルデータを用いて、コブ・ダグラス生産関数を推定した。分析対象の市町村は、資本データとして用いるバランスシートの「有形固定資産」を、数年にわたって公表している19の市町村である。 この結果は後述するように、「地方公共団体の生産性分析生産関数モデル」として、2010年9月に兵庫県立大学情報科学研究科研究会において発表した。これを加筆・修正し、追手門経済論集45巻2号に「地方公共団体の生産性分析その1 生産関数モデル」として掲載した。この結果、公共団体の総職員数と行政本体の有形固定資産とを説明変数とし、市町村分配所得を非説明変数とする生産関数が無理なく説明することができた。
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