研究課題/領域番号 |
22530251
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
新海 哲哉 関西学院大学, 経済学部, 教授 (40206313)
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研究分担者 |
大川 隆夫 立命館大学, 経済学部, 教授 (10258494)
岡村 誠 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (30177084)
播磨谷 浩三 立命館大学, 経営学部, 准教授 (90347732)
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キーワード | 有限責任 / 無限責任 / 権限移譲 / 寡占競争 |
研究概要 |
昨年度までの研究成果をもとに作成した、「研究発表欄」の第二論文(査読付学術専門誌へ投稿中)"Delegation and Limited Liability in a Modern Capitalistic Economy"では、(1)不確実性下かつ無限責任下で複占企業の所有者が経営者に権限を移譲する(利潤最大化とは異なるインセンティブを与える)か、しないかの選択を第一段階で行い、その結果を知って第二段階で経営者がCournot競争する複占モデル分析を行った。無限責任下では、需要が小さいときは、1社が権限移譲、1社が委譲なしの混成タイプの均衡が存在するが、需要が十分大きいときは、両社とも権限委譲の複占競争均衡となることを示した。(2)ところが、不確実性下かつ有限責任下の企業において、(1)と同様に第一段階で、所有者(株主)が経営者に権限を移譲するかどうかを選択し、その結果を知って第二段階で経営者がCournot競争する複占モデル分析を行うと、「無限責任下」とは異なり、常に両社とも権限委譲の複占競争均衡となることを示した。すなわち、株式会社等の有限責任制度の導入は、複占企業の所有者の経営者への権限の移譲を促し、より積極的な生産活動をさせることを示し、経済厚生上も望ましいことを示した。 また、第一論文(査読つき学術専門誌へ投稿準備中)"Endogenous Determination of Business Organizational Form"では、上記論文とは異なり、第一段階で、企業所有者が「有限責任企業」か「無限責任企業」の組織形態を内生的に選択し、第二段階でCourmot寡占(n社)競争を行う二段階ゲームモデル分析を行った。(1)「無限責任企業」が市場に残存可能であっても、すべての企業が「有限責任企業」となり、(2)n社すべてが「有限責任企業」となり、経済厚生上も望ましい均衡の存在を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
字数制限のため、上記「研究実績の概要」では記述していないが、理論で確立した寡占市場下での権限の移譲の有無の結論を実証的に検証するため、播磨谷を中心として金融規制緩和前後の日本地銀のデータを用いて貸出競争の実証分析を行い、規制緩和後も日本地銀は権限移譲タイプ(利潤最大化とはことなるインセンティブを与えられている)の貸出行動を示唆する検証結果が得られており、論査読つき専門誌へ投稿すべく論文執筆中であり、実証研究まで研究が進展しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
理論モデルで得られた成果を実証的に検証することは、ほとんどの寡占企業が、複数種の財・サービスを生産、供給していることから、寡占市場をデータ的に確定することが難しいので、これを克服する実証アプローチの工夫とデータ利用可能性の追求が必要である。ただ、業種によっては寡占市場の範囲を確定できるものを、国際寡占データ等で得られる可能性もあり、実証分析に向けてさらに研究を進める。また、「有限責任企業」、「無限責任企業」という、企業組織形態の選択は、歴史的に見て法人税制等の制度と関係があるといわれており、制度は各国まちまちで、制度をモデルに統一的に組み込むためには、かなりの工夫を要する。
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