研究概要 |
2012年度には、本研究課題に主要に関連する4つの学術論文(下記 研究発表欄の雑誌論文の4番目~7番目のDiscussion Paper Series, School of Economics, Kwansei Gakuin University No.96,94,91,87、を執筆し、かつ査読付国際学術専門誌に投稿中である。 No.87の論文では、有限責任、無限責任下において、企業所有者が経営管理者に権限を委譲するかしないかを決定できる複占モデル分析を行い、無限責任下では権限委譲が行われるとは限らないが、有限責任下では必ず権限委譲が行われることを明らかにした。 No.91の論文では、n社のCournot寡占で、市場での数量競争の前に、各企業所有者が有限責任か無限責任を内生的に選択できる2段階ゲーム分析を行い、1)各企業が無限責任を選べたとしても、すべての企業は有限責任体制を選び、2)すべての企業が有限責任を選んだときに達成される市場均衡は、経済厚生上次善の意味で効率的であることを示した。 No.94の論文では、Cournot寡占市場で同質サービス(貸出し)を供給する現実例として、日本の地方銀行の金利自由化以降(1980~2009)の公表貸出しデータを用いて、これらの地方銀行が利潤最大化行動をとったか、売上最大化行動をとったかを実証分析し、地銀は金利自由化以後であっても売上(貸出額)最大化行動をとったことを検証した。 No.96の論文では、独占と有限責任の関係を理論的に分析し、有限責任下の独占企業では、利潤最大化が売上最大化より選好されることを示し、この結果が世界ではじめての有限責任企業といわれている、17世紀初頭の利潤最大化を目的とするオランダの東インド会社の業績が、売上最大化を目的とするイギリス東インド会社よりもよかった事実と整合的であることを明らかにした。
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