2001年に日本が初めて発動した暫定セーフガードを巡る動きを我が国における保護主義的動向と捉え、 この事例を基に保護主義に係わる3つのテーマについて考察した。 第一に、 一国における各地方からの保護主義的な要求を高める要因は何かということを理論・実証の両側面から分析し、各都道府県の政治的要因が地方からのセーフガード発動を求める声の高まりに強い影響を及ぼしたことを確認した。 第二に、 新聞の報道が貿易政策を巡る政治的動向に与える影響を理論的に分析し、自らの利益を支持しない内容の記事よりも支持する内容の記事をより高く評価するような有権者が貿易政策に関する情報を求めて新聞を購読する場合、貿易政策に関する新聞記事は内容にバイアスがかかり、その貿易政策に対する有権者の政治的支持と政治家の行動に影響を与え得ることを示した。第三に、輸出自主規制が禁止されたWTO体制下でも、国内の保護主義的要求によるセーフガード発動の脅威が輸出国から輸出自主規制的な動きを引き出し得ることを理論・実証の両側面から示した。
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