平成22年度にベトナムにおける多国籍企業・国営企業・民間企業の廃棄物効率性を比較する論文を1本作成し、今後の研究のためにデータベースを更新した。2000~2008年までのデータの大規模な整理を行ったが、廃棄物指標と技術指標が両方存在するのは2002年と2004年のみであった。従って、22年度の論文に2002年と2004年のデータを利用したが、今後の研究は2005~2006年のデータの追加を計画している。 平成22年度の論文は汚染量の多い産業において、多国籍企業の廃棄物性向(廃棄物販売比率)が低い産業が少数であり、逆に国営企業の性向が高い産業が半分程度であった。しかし、その他の生産要素の需要と技術効率性の影響を考慮した計量分析によると、多国籍企業と国営企業の廃棄物性向が高いケースは少数であり、多くの産業において多国籍企業と国営企業と民間企業間の廃棄物性向の違いは統計的に優位ではなかった。 上記の結果は、政策が所有形態別に偏る理由にならない。所有形態別の廃棄物性向が異なる場合でも、その相違が国営企業と多国籍企業の技術的な特徴に依存する場合が多い。従って、環境政策においては企業の所有形態を問わない方が合理的である。第二に、多くの企業が廃棄物量を報告しないため、データが廃棄物量というよりも廃棄物量報告の有無を示す可能性がある。第三に、この論文の焦点が狭いため、さらに分析を追加する必要がある。たとえば、最近のデータや廃棄物の処分率などの分析により、より意味のある結果が得られると考える。
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