先行文献や公表された統計資料等を収集・整理するとともに、秋田県で実証試験が行われている稲わら(セルロース)からバイオエタノールを生産する第2世代のバイオエタノール生産プラントを対象に生産費用の調査を行った。その結果、稲わらを原料とするバイオエタノール生産のコストは、圃場から稲わらを収集するコストが45円/リットル、プラントでの発酵プロセスに要するコストが45円/リットルと見積もられていること、施設の減価償却費が発酵プロセスに要するコストとほぼ同額になることを明らかにした。これらの値からみて、近い将来にバイオエタノール生産の全体コスト(税金を除く)が2011年度末のガソリンの販売価格と同額になる可能性が高いことが示唆できた。 次に、コストデータをもとに東アジア地域におけるバイオエタノール生産・利用の経済評価を行うため、JETROアジア経済研究所の地域間産業連関表やGTAPのデータを使って東アジア地域間産業連関表を作成した。その表をもとに影響力係数、感応度係数を算定し、東アジア各国の経済的なつながりや各国の産業構造を分析した。その結果、中国、日本、マレーシアの最終需要の変化が他国に与える影響が大きいこと、逆に、フィリッピン、インドネシア、ベトナムは他国への影響力が小さいこと、さらに、日本、アメリカ、韓国、中国は、地域内各国の生産増加が波及して当該国の生産が誘発される効果が大きいことを定量的に解明した。 得られた結果のうち、稲わらからのバイオエタノール生産のコストのデータは、東アジアにおけるバイオマス資源利用の経済評価に不可欠な基礎データであり、来年以降のシミュレーション分析につながる重要な成果である。また、地域間産業連関表のデータは、今後の応用一般均衡モデル作成に反映できる。さらに、経済構造の分析は、東アジアを対象とする経済モデルの改良につながる学術的な成果として意義深いものと考えられる。
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