研究課題/領域番号 |
22530260
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
土井 正幸 群馬大学, 社会情報学部, 教授 (40217609)
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キーワード | 外航定期船産業 / 海運同盟 / 航路協定 / コンソーシャム / 独占禁止法 |
研究概要 |
定期船同盟を欧州連合(EU)競争法の包括適用除外と規定する規則が廃止され、2008年10月18日に欧州発着の全同盟が消滅した。一昨年度は、EUの政策管理の欧州委員会(EC)や陳情活動を行っている欧州荷主協会(ESC)など関係機関を調査し、その評価や対応を分析した。その後も2011年5月にECは、EU競争法の違反がないか大手船社の欧州事務所の調査を実施するなど強い対応をしている。 昨年度は、米国で外航海運輸送政策を策定する連邦海事委員会(FMC)や荷主団体である全米産業輸送連盟(NITL)や船社団体の世界海運評議会(WSC)などを調査した。FMCはEUの同盟廃止の市場への影響を分析し、影響が目立って表面化していないとして、TSA航路安定化協定などの政策を少なくとも当面は変更しないことを、今年に入って実質的に表明した。NITLは反発し、WSCはもっと明確な反トラスト法適用除外の政策を期待している。 この定期船業界政策の明確な世界的ダブルスタンダードにより邦船社など船社や荷主に戸惑いを与え、あいまいさが混乱を招いている。コンソーシャム(船社同士の共同の運行・港湾利用・営業活動によるサービス合意)に関しても注目は高まっており、ECはコンソーシャムの競争法免除条件を強化し、ESCや世界荷主フォーラム(WSA)もコンソーシャムの競争法の一括適用除外に反対する方向している。これに対して、NITLはコンソーシャムに対しては、船社の効率性を高めると評価している。 こうした欧米の政策は、保護すべき対象や規制制度などの面でそれぞれ異なった特徴があり、その背景を考慮した上での分析・評価が今後必要となる。また、EUの影響がいわゆるリーマンショック経済影響と重複しているところから、今後の政策提言にはその分析手法にも改善が望まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの2年間で、海運同盟・航路協定・コンソーシャムに関する国内外の関連民間団体・行政・研究機関への調査が順調に進み、政策議論も欧米の状況を踏まえて進捗している。データもかなり出てきているので、分析も見通されてきた。
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今後の研究の推進方策 |
海運同盟・航路協定・コンソーシャムに関する国内外の調査については、補足程度を行う。分析・政策議論については、欧州と米国と日本のねらいや制度的相違を整理し、それに基づいた結論・提言を探る。予算制約により欧州か米国かを選び、関連訪問先と政策議論を行うこととする。
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