貧困削減の手法として、援助に頼ることなく、貧困解消という社会的目的を目指しながら経済性を持つ新しい制度を構築することによって貧困削減を達成しようとする試みが様々な形で実践されてきており、その代表例がバングラデシュのグラミン銀行である。このような社会的目的を営利企業として実現しようとするのが社会的企業である。このような社会的企業は、マイクロクレジットの分野だけに限られるのではなく、フェアトレード、有機農業やサステナブル・コーヒーやエコツーリズムなど様々な分野で見られる。本研究は、アマルティア・センのケイパビリティ・アプローチを用いて、アジアの国々で見られる社会的企業の多様な実態を調査し、その仕組みを理論的実証的に示すことを目的としている。 平成22年度に行なったバングラデシュ調査では、グラミン銀行が推進している社会的企業について、ケイパビリティ・アプローチと経済学的分析の比較を通して、その要件について明らかにしようとした。グラミン銀行グループの社会的企業(ヨーグルト事業など)を事例として分析した。一方、貧困世帯の現状について、海外共同研究者であるモティウル・ラーマン教授(ダッカ大学)とともに、5年前に行なった調査と比較可能な形でデータの収集と基礎的な分析を行なった。また、グラミン銀行がスペインで実施しているマイクロ・クレジットの活動についても調査を行なった。 ベトナム調査では、海外共同研究者のホヴェンニエクダム(タイグエン大学)と共同でベトナム中部高原のコーヒー生産地において認証制度の有効性を調査し、コーヒー栽培と少数民族の文化を結びつけたッーリズムの可能性について調査を行なった。 タイ調査については、海外共同研究者のクリアンサック・ブンティアン(マハサラカム大学)との日程上の問題により、当該年度に現地調査を行なうことはできなかった。2年度目以降に調査を実施する予定である。
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