1990年代から主流となる発展途上国における貧困削減の流れの中で、援助には頼らず、貧困解消という社会的目的を目指しながら経済性を持つ新しい制度を構築することによって、貧困削減を達成しようとする試みが社会的企業として注目されている。本研究は、そのような社会的企業の要素を持つフェアトレード、有機農業などを取り上げ、それを成り立たせている仕組みを、ケイパビリティ・アプローチを用いて理論的実証的に示すことを目的としている。平成23年度に行なった主な研究は次の通りである。 バングラデシュのグラミン銀行のマイクロクレジットはスペインでも様々な形で取り入れられている。アフリカからの移民やホームレスなどの貧困層に対し、同様の活動を行なっているのだが、大きく異なる点は5人組のような小グループを作っていないことである。そもそも5人のグループを作れないほど人間関係が狭いということである。そこで行なわれていることは、バングラデシュなら存在している人間関係を構築することから始めるということであり、社会関係資本の重要性が示されている。 松井と坪井は2011年12月バングラデシュで現地調査を行った。訪問先は、ダッカ大学、グラミン銀行、グラミン・シャクテイ、グラミン・ユニクロ、およびグラミン・ユキグニ・マイタケであった。ダッカ大学では現在編集中の調査研究報告書(Dynamics of Poverty)の編集、さらなる研究打ち合わせを行った。グラミン・シャクテイはバングラデシュ各地の農村地域における太陽光発電、バイオ発電と衛生釜の普及事業を行っており、太陽光発電の貧困への影響調査の可能性などについて、実際に村に入り、家庭と商店などで聞き取りを行った。グラミン・ユニクロはダッカ市内で、ユニクロ・レィデイー(4人)とのミーティングを持ち、各家庭での生活を見学した。グラミン・ユキグニ・マイタケは、もやしの種の栽培を行っており、その現状についてヒアリングを行った。 本研究の成果の高校生への紹介として「ひらめきときめきサイエンス」を実施した。
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