1990年代から貧困削減が国際協力の主流となっていく流れの中で、援助には頼らず、貧困解消という社会的目的を目指しながら、経済性を実現することによって持続可能な事業としようとする「社会的企業」が注目されるようになってきている。その代表例は、バングラデシュのグラミン銀行である。グラミン銀行の創始者であるユヌス博士はグラミン銀行が展開している様々な活動を社会的企業と位置付けているが、そのような社会的目的を持ち、かつ持続可能な経済的活動は様々な分野で行なわれている。本研究では、そのような活動を経済的に成立させているメカニズムを明らかにするために、グラミン銀行の活動の他、有機農業を持続可能にするコミュニティ活動や有機認証制度、コーヒー産業におけるフェアトレードや各種の認証機関、エコツーリズムについて研究を行なってきた。 本年度は最終年度であり、これまで行ってきた調査結果の取りまとめを行なった。2013年2月15日と17日には、それぞれ東京大学東洋文化研究所と秋田大学において関係者を招いてセミナーを開催した。招聘者にはバングラデシュのダッカ大学のラーマン教授も含まれる。本研究の理論面における成果として、社会的企業を、市場を越えた人的つながり(絆も含まれる)に基づく活動と捉え、それらを大きく「連帯経済」として位置付ける方向で取りまとめを行なった。実証研究では、バングラデシュのグラミン銀行が行なっているマラリア予防のための蚊帳の製造販売などの活動、有機農業ではベトナムにおける日本人社会で普及しつつある有機農産物の販売、そして新たな活動として宮城県で見られる復興支援の活動について調査を行なった。本研究の成果は、Solidarity Economy(連帯経済) というタイトルで英語および日本語で出版される予定である。
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