研究課題/領域番号 |
22530263
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
猪飼 周平 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 准教授 (90343334)
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キーワード | 長期ケア / 国際比較 / 社会福祉関係 / 介護 / 社会的入院 |
研究概要 |
平成23年度においては、1960年代以降におけるアメリカにおけるナーシングホームの発達史、および日本における「老人病院」および特別養護老人ホームの発達史を、主に文献調査を通じて比較検討した。その過程で認識されたのは、次の2点であった。 第1に、アメリカのナーシングホームは、日本の高齢者施設に比して、その内的多様性にもかかわらず、1つの明確な特徴をもって形作られてきたということである。家族やその他よりも本人の意思決定=自己決定に強く傾斜した制度として形作られてきたということである。これに対して、日本の高齢者施設においては、意思決定に困難のある入所者に関する意思決定については、かなりの程度家族に依存するように形作られてきたということである。 第2に、その際、重要なことは、日米いずれにせよ制度が持続可能であるためには、他者(支援者)からみて明らかに本人の不利益になるような本人による意思決定を防ぐ社会的メカニズムが施設の入所者管理に内包されていなければならないということである。日本の場合、家族がケアに関する比較的重大性の高い意思決定を担い、より日常的なケアについては施設職員など支援者が担うことでこの課題を「解決」する。これに対し、アメリカではこのような非公式かつ実質的な意思決定の代行者は表面的には存在していない。ここから次の3つの仮説が導き出される。すなわち、(1)実質的な意思決定の代行を可能とする慣習的ルールが存在する、(2)入所時の契約内容の解釈によって運用が可能となっている、(3)自己決定力を喪失した者が何らかの方法で施設から排除される。この仮説群の検証は平成24年度の研究の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査とくに日米施設におけるサンプル調査は十分に進展していない部分がある一方で、文献調査は先行的に進んでいる。また、成果という観点からみれば、研究成果として結実することが期待できる知見は深まりつつある。その意味では、研究はおおむね順調に推移していると認められる。
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今後の研究の推進方策 |
研究自体はおおむね順調に進展していると認められることから、現状では大幅な研究計画の変更の必要はないと考えられる。平成24年度はとくに現地調査に力点を置いて研究の進展のバランスをとりたい。
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