研究課題/領域番号 |
22530268
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
駿河 輝和 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (90112002)
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キーワード | 契約栽培 / 中国商人 / 過少体重 / 過少身長 / 社会関係資本 |
研究概要 |
2011年8月に、ラオス北部ウドムサイ県の農山村であるナサヴァン村、クォン村などで中国商人による契約栽培、農作物買い付けの状況と所得への影響、子どもの教育と健康に関するフィールド調査を行った。中国国境のルアンナムタにおいて、国境特区、ゴムの栽培状況などについて県庁や現地での聞き取り調査も行った。北部の村では、タバコの栽培が急速に広がっており、タバコの乾燥用倉庫があちこちに建てられていた。中国商人の進出により、ラオス農民に大きな収入機会が生じているが、全ての村や家計が成功しているわけではないことが分かった。成功している村、家計とそうではない村、家計の間で所得不平等が生じてくる気配がみられる。これまでに実施したウドムサイ県のナサヴァン村、マイナータオ村、ホームサイ村で行ったサーベイを使用して分析を行った。3村での子どもの健康状況の結果は、過少体重が18%、過少身長は41%であった。過少体重は一時的な栄養不足を、過少身長は長期的な栄養不足を表していると考えられ、長期的な栄養不足がより大きな問題となっている。ただし、3つの村の中で、最も豊かで、親の教育水準も高いナサヴァン村では、過少体重は11%、過少身長は29%と格段に少なく、所得の増加により栄養不足問題を改善できる余地は大きい。また、母親の身長、教育などをコントロールして回帰分析を行い、社会関係資本の子どもの健康に与える影響を見たところ、社会関係資本は有意に子どもの健康を改善していた。ウドムサイ県の経済発展は著しく、2005年度から2009年度までの年平均経済成長率は13%であった。最近の発展は海外直接投資に支えられていて、農業部門にもかなりの投資が流入している。3つの村でも、タバコ、果物、ピーマンの作付面積と栽培家計の数が急増している。商品作物の栽培家計と非栽培家計間で現金収入の格差は開いていることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラオス北部ウドムサイ県においてナサヴァン村、マイナータオ村、クォン村などで中国商人による契約栽培の所得に与える影響、子どもの健康と教育のサーベイ調査を行うことができた。これまで集めたデータにより、ウドムサイ県の、子どもの健康状況、社会関係資本、中国商人の影響などの論文を作成できた。雨期にために、予定していた村に行くことができず、調査できなかったのが残念な点である。
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今後の研究の推進方策 |
ラオス北部の農山村と南部の村についてサーベイ調査を続ける予定である。北部については中国商人による買い付けと契約栽培が急速な進展を見せていて、その影響を多面的に調査していく予定である。南部では、タイへの出稼ぎにより収入の機会が拡大しており、その影響を調べてゆく予定である。収入機会はラオス全体に広がっているが、リスクもあり、成功している例と失敗例を調べ、その要因を分析する予定である。調査実施の問題点は、研究代表者が研究科長であるため、ラオスの雨期に調査をせざるを得ず、道路の悪化のために予定していた村に近ずくことができないケースがよくあることである。
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