本年度における本研究課題の具体的な目的は、以下の2点である。 1.国際航空における基礎的データ・ベースの収集・構築とアジア地域における国際運輸政策の動向調査 2.我が国における国際拠点空港の競争力分析 上記の研究目的を遂行する上で、アムステルダム大学の研究者との共同研究の下で、主に以下の2点について取り組んだ。 (1)航空旅客の経路選択率を推定するモデルの構築 (2)構築した理論モデルとOAGデータ・ベースを援用し、我が国の主要国際空港における競争的地位の分析 (1)では、現在まで航空旅客の経路選択率は主にアンケート調査等に基づいて推定されていたが、航空ネットワーク・データから、航空旅客の経路配分/経路選択を推定する手法を提案した。 (2)では、開発したモデルにOAGデータをインプットし、我が国を出発する航空旅客を分析対象として、直行便および経由便の割合(経路選択率)、そして経由便に対しては、経由空港における市場シェアの推定を行った。その結果、直行便の経路選択率が最も高かったものの、経由便に対しては、日本に戦略的な路線展開を行っている仁川国際空港が、比較的大きな市場シェアを占めていた。その一方で、我が国の主要国際拠点空港は、乗り換え空港として十分に機能していない実態が明らかとなった(雑誌論文1~4)。 また、2010年10月末に国際線が再開された東京国際空港(羽田)について、そのトランスファー(乗り換え)空港としての競争的地位に対する効果を定量的に把握した。その結果、特に、我が国とアジア/オセアニア地域、北アメリカ地域、そしてヨーロッパ地域との間で、乗り換え旅客に対する同空港の市場シェアは顕著に増加した。これらの研究成果については、ポルト(ポルトガル)で開催された国際学会(The 14th Air Transport Research Society-World Conference)、およびベルリン(ドイツ)で開催された国際会議(The 9th Conference on Applied Infrastructure Research)において報告を行った(学会発表1および2)。
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