研究課題/領域番号 |
22530269
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松本 秀暢 神戸大学, 大学院・海事科学研究科, 准教授 (70294262)
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キーワード | 航空旅客 / 経路選択率 / 乗り換え旅客 / 市場シェア / ハブ空港 / 国際競争力 / 国際研究者交流 / オランダ |
研究概要 |
本年度における本研究課題の具体的な目的は、以下の2点である。 1.航空ネットワーク形成とハブ空港配置に関する先行研究のレビュー 2.外部不経済を内生化した学際的モデルの開発 上記の研究目的を遂行する上で、アムステルダム大学の研究者との共同研究の下で、主に以下の2点について取り組んだ。 (1)「航空旅客の経路選択率を推定するモデル」における再現性の検証 (2)「航空旅客の経路選択率を推定するモデル」の拡張 (1)では、我が国を出発する航空旅客を分析対象として、平成22年度(1年目)に構築したモデルによって推定した経路選択率と、国土交通省航空局による国際航空旅客動態調査の集計結果について、最新の調査結果である2009年(平成21年)を対象に比較を行った。その結果、両者の前提条件等に起因する相違はあるものの、比較的高いモデルの再現性が確認された。なお、これらの研究成果については、シドニー(オーストラリア)で開催された国際学会(The 15th Air Transport Research Society-World Conference)において報告を行うと伺時に(学会発表1)、現在、国際ジャーナル(Transport Policy)に投稿中である。 (2)では、経済学やOR、地理学、工学等の既存分野におけるモデルのレビューを行った上で、平成22年度(1年目)に構築したモデルに対して、環境コスト等の外部不経済を内生化したモデルを開発している。特に、二酸化炭素の排出量によって一般旅行費用を推計した上で、航空旅客の経路配分/経路選択を推定する手法を、平成24年度(3年目)初めには提案予定である。 なお、平成22年度(1年目)に、国際線が再開された東京国際空港(羽田)について、そのトランスファー(乗り換え)空港としての競争的地位に対する効果を定量的に把握し、その結果を国際学会で発表したが、平成23年度(2年目)に国際ジャーナルに掲載された(雑誌論文4)。さらに、我が国を出発する航空旅客を分析対象として、本モデルによって推定した経路選択率と経由空港シェアについて、一般読者向けに解説を行った(雑誌論文1~3)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、国際的に評価の高いジャーナルに掲載された意義は、極めて大きい。現時点でのモデルには幾つか問題点があるものの、国際ジャーナルへの掲載は、現時点において、本モデルが是認されたことを意味する。今後、本モデルを拡張する上で、その基礎研究は成功したといえるだろう。 ただ、当初の「研究実施計画」では、平成23年度(2年目)中に拡張モデルの開発は終了予定であっただ、平成24年度(3年目)初めまで時間を要する見込みである。それは、環境コスト等の外部不経済を内生化した学際的モデルの開発は、簡単ではないからである。 以上から、現在までの達成度は、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成24年度(3年目)においては、環境コスト等の外部不経済を内生化した学際的モデルの開発を終了し、アジア地域における航空ネットワーク形成とハブ空港配置に関して、実証分析と政策シミュレーションを行う予定である。そして、我が国の国際拠点空港がアジア地域のハブになるための政策提言へと繋げたい。 さらに、東京国際空港(羽閏)における国際線開設の実態、あるいは成田国際空港や関西国際空港等における低費用航空会社(LCC)の躍動をはじめ、昨年度公表した論文とは状況が大きく変化しているため、時間的余裕があれば、これらの要因を考慮した分析を行う予定である。
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