平成22年度研究では、地域医療サービス提供における公立病院と民間病院の機能分担を医療資源の配分の観点から分析した。 これまでの共同研究(平成19~21年度)で提示した出来高に基づく点数単価調整方式や特定な一疾病に対する診療報酬総額の適正な設定そして医療機関のクールノー・ナッシュ競争を考えるならば、医療機関数が少なく独占状態にあるような人口過疎地域における点数単価調整方式は包括支払と同じになり、包括支払制度で懸念される過小診療が生じる可能性が生じる。しかしながら、新たな医療機関が人口集中する大都市地域に参入し医療機関間の競争が促進されるならば、医療機関は患者獲得のため過小診療のインセンティブを持たなくなる。逆に、医療機関は、出来高に基づく当該疾病に関する一連の診察・治療行為の各医療機関の請求点数のために過剰診療のインセンティブが強くなる。しかし、過剰診療による診療報酬点数(請求点数)の増加は、当該疾病の診療報酬総額が適正に設定されている限り、診療報酬点数(請求点数)の単価を引き下げる。その結果、医療機関が当該疾病から得る診療報酬額を減少させる。 したがって、特定な一疾病に対する点数単価調整による診療報酬方支払式のもとでは、過疎地医療は公立病院に担わせ、人口密度が高い都市地域の医療サービス供給は民間病院に任せることによって、当該疾病の診療・治療に対して医療資源の効率的な配分が可能であることを示唆している。
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