研究課題/領域番号 |
22530271
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
稲垣 秀夫 和歌山大学, 経済学部, 教授 (70159937)
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キーワード | 出来高 / 包括支払 / フリーアクセス / 機能分担 / 初期治療 / 継続治療 / 二段階診療 / 診療報酬総額 |
研究概要 |
平成23年度の理論研究では、外来治療に診療所、入院治療に病院とする医療機関の機能分担化と各医療機関への初期受診時における患者の「フリーアクセス制」を前提とする医療サービス供給体制を設定する。全医療機関は、患者の初期受診においては全患者を受け入れ、初期の検査・診療を施す。この初期の検査・診療後、患者の疾病レベルに応じて、入院治療が必要な重度患者は診療所から病院に、外来治療で十分な軽度患者は病院から診療所に相互に紹介が行われ、それぞれの機能に応じた継続治療を行う医療サービス供給システムを想定する。この供給システムは初期の検査・診察と継続治療をワンセットとする「二段階診療」方式を想定している。医療機関への診療報酬支払方法は外来治療と入院治療とでは異なる。すなわち、出来高払の診療報酬支払が外来治療に対して適用され、入院治療は現行「1日当たり」とは異なる「1人当たり」包括支払を適用する。 初期受診時における患者のフリーアクセス制、想定する二段階診療と診療報酬支払方式の下で、医師よる初期や継続段階における患者の治療レベルの選択行動が、医療機関の機能分担化と機能分担化に対する診療報酬支払の措置が患者の治療レベル選択に及ぼす効果を理論分析した。以下の分析結果が得られた。 患者のフリーアクセス、初期の検査・診察と継続治療をワンセットとする二段階治療を想定する状況下において、出来高払による診療報酬支払を適用する初期の検査・診察では、医者が選択する治療レベルは医療機関に訪れる重度患者比率に依存して高い治療レベルが選択される。しかし、初期の検査・診察後の医療機関の患者紹介行動は軽度患者に対する選択治療レベルを引き下げる。患者紹介後に施される入院治療における治療選択レベルは、患者1人当たりの包括支払に診療報酬支払によって入院加療が必要な重度患者の疾病レベルより低い治療レベルが選択される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は外来診療に出来高払や入院治療に包括払とする現在の診療報酬支払制度が医療機関の機能分担に与える効果を明らかにすることであった。理論モデルの構築し理論命題が導出された。しかし、理論命題の検証・修正のための実験経済システムネットワーク構築が進展せず、理論モデルの検証・修正による医療機関の機能分担に有効な診療報酬支払方法の基本的な枠組みを提示できていない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である24年度研究は検証・修正の実験経済システムネットワークを構築、理論モデルの検証・修正による医療機関の機能分担に有効な診療報酬支払方法の基本的な枠組みを提示する。その後、地方公立病院を核とする地域医療サービスシステムにおける地域ごとの診療報酬制度の基本的な枠組みが「質の確保」、「非効率な医療供給の解消」と「医療費総額の削減」に対する効果の実験を行い、地域ごとの診療報酬制度の基本的な枠組みの性能を検証する。
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