研究概要 |
『景気循環のシンクロナイゼーションと景気指標の評価開発に関する研究』という研究課題のもと,今後5年間にわたって国民生活にとって重要であり,ゆえに国民の関心も非常に高い景気に関する研究を行っている。この研究期間の初年度にあたる本年度は「景気指標の評価・開発に関する研究」を中心に研究を行った。経済協力開発機構(OECD)は,日本を含むその加盟国と中国やブラジルなどの主要非加盟国の景気先行指数(CLI)を計算・公表しているが,2008年12月以降その計算方法を修正し,新たにホドリック・プレスコット・フィルター(HPフィルター)に基づくバンドパス・フィルターを使用し始めた。HPフィルターに基づくバンドパス・フィルターは,OECDが採用したもの以外にも知られているが,CLIの計算に両者がどの程度の差異をもたらすのかはこれまでのところ知られてはいない。そこで今年度は両者がどの程度の差異をもたらすのかを周波数領域での分析を行うなどして明らかにすることを試みた。分析の結果,OECDが景気循環成分として抽出するその周期が1年から10年という周波数帯成分の計算において両者はそれほど異なる計算結果をもたらさないことがわかった。こうした結果をまとめた論文を,現在,査読付き国際学術雑誌に投稿中である。そのほか,今年度は景気循環分析に欠かせない計量経済分析ツールとなっているHPフィルターと関連する事項(バターワース・フィルターなど)について調査・研究を行った。
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