EPAにもとづいて受け入れた外国人介護福祉士候補者を丁寧な教育訓練によって国家試験の合格へと導き、さらには彼らの受け入れと教育をつうじて、受け入れた介護施設そのものが予想もしなかったほど大きく変貌を遂げ、働く職員に働きがいを実感させ、生き生きとした介護組織へと見事に成長している施設を訪問した。この施設は外国人介護士受け入れによって介護組織に好循環が実現されたモデルケースである。 この事例から分かったことは、ケアマネジメントとEPAマネジメントとの相補関係である。施設において遂行されるさまざまなケアを共有化、科学化、可視化するという日常的なケアの営みが好循環の一つの条件である。他方で、この好循環が実現するためには、EPAにもとづく外国人介護士一人ひとりの潜在能力に着目し、それを貴重な人財として積極的に活かす人事管理上の個人化、日本人と同じ職員として処遇しつつ育て上げる実践的な戦力化、そして、それらの実現のために多様な工夫をし、日本人と外国人との協働化に向けて組織を動かすダイバーシティマネジメントの存在がもうひとつの条件である。そしてこのモデルケースが我々に教えていることは、これら2つの条件のいずれかが先にあるのではないということである。両者は、この施設自身も発見し驚いたことだが、まさに同時並行して成立したのである。ここにEPAによる外国人介護士受け入れという日本的方式のもつ埋もれた可能性が秘められている。
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