研究概要 |
本研究は、幸福度の高い社会の構築との問題意識から、まず、人々の幸福に対するとらえ方を定量的に把握するとともに、人々の幸福度とワーク・ライフ・バランスとの関係を解明すべく、マイクロデータを用いた実証分析を行う。具体的には、幸福度に関する自由記述を分析することにより、現在の日本人の幸福度を浮き彫りにする。更に主観的な幸福感に着目し、就業の状況、家庭での時間の過ごし方、子どもや介護等の家族形態等の個人的属性から職場と家庭における人々の行動を観察する。そして就業と家庭における時間の過ごし方が人々の主観的な幸福感に与える影響を実証的に明らかにすることにより、近年注目されるワーク・ライフ・バランスのあり方とその効果的な施策について検討を行うことを目的とする。平成22年度は、以下のとおりの活動を行った。 1.文献調査:女性のワーク・ライフ・バランスと幸福度に関する文献調査を行った。Journal of Happiness Studiesなどの専門誌をサーベイするとともに、NBER Working Papersなどのワーキングペーパーもチェックし、最新の研究動向を把握した。特に、B.Frey[2008],"Happiness : A Revolution in Economics (Munich Lectures in Economics)H", The MIT Press.については、翻訳作業を行った、同書は啓蒙書ではあるが、幸福度研究の第一人者の近年の知見をまとめたものであるため、子細な検討が、本研究課題の推進にとっても有効と考えた。 2.ordered Probitモデルによる計量分析:既に、白石・白石[2009]において、夫の家事育児時間が女性の幸福度に与える影響に関する分析は終了しているため、このモデルを拡張し、女性の家事育児時間が女性本人の幸福度に与える影響を分析するための推計作業を行った。まだ確定的な結果が得られていないため、次年度も引き続き検討を行うこととする。 3.ヒアリング:(1)と(2)はあらかじめ研究計画に挙げていたものであるが、それ以外の活動も行った。すなわち、本研究課題は、政策的な問題意識を持っている一方で、国や地方自治体等では幸福度を政策課題として着目しているところがある。そこで、内閣府と荒川区の研究会に参加し、現実の政策と幸福度に関する関係性についての議論等を行うことで、自らの研究課題へのフィードバックを行った。
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