本研究は、移行経済体制の下で民間企業を中心とする裾野産業ネットワークの欠如は開発途上国の長期かつ自立的な経済成長をもたらす工業生産の競争力を抑制させる決定的な要因であることを明らかにした。こうした結論を導いたのは、産業間及び企業間のリンケージを注目された(工業化論についての)理論的な考察と複数回で繰り返して実施した(ベトナムの製造業における民間企業の競争力についての)現地調査から得られた情報分析の結果である。 具体的に理論的な考察では東アジアの工業生産における国際分業のプロセスを説明するため、先行研究(生産のブロック化とサービス・リンクコストの理論や製品アーキテクチャ論)と異なるアプローチで、共通な生産工程・技術の特徴を基準に複数分野を超えて定義される裾野産業の概念を導入しながら、裾野産業の内生(伝統)型と外来型の形成パターンの区別に基づく分析視点を提唱した。 また実証研究では、ベトナムの製造業における民間企業を中心に、現地調査を行い、二百五十社の中小企業のデータベースを作成し、内二十社へのヒアリングから収集された情報を参考に、2000年以降ベトナムの工業発展と民間企業の競争力について現状分析と問題点を提示しながら、産業間及び企業間のネットワークの欠如を決定的な要因として分析を行った。 主要な研究成果は、国内外の(査読有)学術雑誌(ベトナム社会科学院の『Vietnam Economic Management Review』、桜美林大学大学院経営学研究科の『桜美林経営研究』)に掲載され、複数回で国際会議や比較経済体制学会で発表された。
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