研究概要 |
本研究の目的は,日本では未整備である政策当局が意思決定の時点で知りえた情報(リアルタイム・データ)を整備し,リアルタイム・データを基に改定のある経済指標について,統計的特性を整理(リビジョン・スタディ)し,政策決定(評価)におけるデータ改訂の影響について定量的に検討することにある. 22年度には,景気動向指数関連,物価関連及び金融政策関連の統計についてデータ整備を行い,景気基準日付の設定状況,物価変数の改定が金融政策に与える影響及び,リーマンショック前後の日本を含む欧米諸国の金融政策について分析を行った. 主な結果は,景気基準日付の決定について1980年代以降は恣意的な判断ではなく公表されているルール通りに機械的に決定されている.しかし,1977年の転換点については当時のデータからは山谷は観測できない.また,1982年の決定はルール通りに実施されたわけではないことも示された.さらに,その後の景気動向指数の改定により,現時点で過去の転換点と一致させるような推計は困難であることが示された. 物価統計に関する金融政策の影響では,CPI及びCGPIの新旧指数が存在する重複期間に注目し,1970年以降の日本銀行の金融政策に決定を検証したところ,1990年以降日本銀行の判断で重視されていることが伺えた.しかし,その後の改定を見越した判断ではなく,改定後の物価統計では判断が異なる余地があることが示された. これらの分析を通じて,リアルタイム・データで判断する場合,事後的には必ずしも適切とはならないこと,過去の当局の決定過程(景気基準日付)を明らかにすること,可能になったと考える.(690字).
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