本研究の目的は、クロス・カントリー・データの分析により、製造業の発展に「制度」、「貿易」、「援助」、「教育」が補完的にどのような強弱で影響を与えているのかを明らかにすることであった。 平成22年度には、「研究実施計画」にあるとおり、製造業、制度、教育、援助、貿易のデータの整備を行った。その過程で国際比較可能な各国の国民生産(GDP)データに重要な問題があることを発見した。具体的には、同じ一人当たり実質GDPのデータであっても、多くの研究者が使用する2つのデータ・ベースであるPenn World Tableと世界銀行のWorld Development Indicatorsで大きく値が異なること、したがってどちらを使うかによって、回帰分析の結果が異なる可能性があることを明らかした。この分析結果は、武蔵大学の紀要および国際的学術雑誌Empirical Economics Letters(査読付き)に発表した。また、援助データについても精査したところ、OECDのデータと世界銀行のデータで整合性が取れていないことを発見し、この結果は武蔵大学のDiscussion Paperとして発表した。 上記結果を受け、平成23年度は具体的な国を取り上げ、製造業、制度、教育、援助、貿易の関連性について調査を行った。具体的には、アフリカで唯一「製造業」の発展による経済成長を実現したモーリシャスと日本の1945-1955年のケースである。 平成23年度の調査をもとに研究を行い、日本のケースについては、制度、援助よりも貿易の方が、効果が大きかったことを明らかにした。 この結果は、平成24年度に武蔵大学のWoriking Paper(日本語)およびDiscussion Paper(英語)として発表した。モーリシャスのケースについては、現在作成中で今後発表する予定である。
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