当初の研究目的は、日本と世界各国の社会関係資本の社会経済へ与える影響を分析することであった。日本の研究については、JGSSデータと各都道府県別データの統合を行い構築したデータを利用して、Social capital(社会関係資本)が所得分配にどのような効果をもつかについて統計分析を行った。主要な発見は、次のようにまとめられる。(1)社会関係資本が大きいほど、高所得者は所得再分配政策を支持する。(2)低所得者の再分配支持の度合いは社会関係資本とは相関しない。この研究結果はEuropean Journal of Political Economy(国際的査読つき学術専門誌)に掲載された。このほか同じくJGSSデータを利用し、地域住民が他者に対して抱く信頼感が、どの程度地方政府規模の影響を受けるかを分析した。その結果、政府規模が大きくなるにつれて、就業者の他者への信頼程度は低下することが分かった。この成果はReview of Social Economy(国際的査読つき学術専門誌)に掲載された。 国際比較としては、社会関係資本が自然災害や人的災害の被害度合にどの程度関係するかを分析中である。今後は現在行っている分析結果をワーキングペーパーにまとめたうえで、国際学術誌に投稿す予定である。
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