技術特化と経済規模、技術規模の関係について既存研究より明らかになったことは、規模に関する指標はGDP、人口、R&D支出、特許数等、論者によって異なるものの、①経済大国(あるいは先進国)の技術活動は広範囲の領域にまたがっているが、小国(あるいは途上国)のそれは狭い領域に集中しているということ、②経済大国の特化パターンはかなりの程度持続的ということである。以上の結果は、経済規模の拡大は当該国の技術領域を拡大させながら(技術の多様化)、当該国の技術特化パターンが持続することを意味する。つまり、規模の拡大は①技術活動の領域を拡大させる一方で、②技術活動の集約度をも高めるという2つの効果を有することになる。それにもかかわらず、規模と技術特化の関係を分析する際、Mangani(2007)を除き、既存研究ではこれらの効果が十分、考慮されてこなかった。当該年度の研究では、前年度のサンプルを大幅に拡大することにより経済規模が技術活動に及ぼす影響を「技術バラエティ」と「技術集約度」の2つの効果に分解、定量化することにより以下の規模と技術特化との関係を確認した。①クロス・セクション分析の結果、経済規模、人口規模、一人当たりGDPの増加は、特許の増加をもたらすことが確認された。②追加的特許登録数の6割近くが技術バラエティの増加によるものであった。③規模の増加、一人当たりGDPの上昇による特許数の増加の6割近くは技術バラエティで説明され、残り4割強が技術集約度の上昇によるものであることが明らかとなった。
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