研究概要 |
初年度にあたる本年度には、当初の計画に沿って、(1)過去に実施した企業調査結果の精査と質問状の再検討、(2)インドの企業成長および分析手法に関する文献調査を行った。また現地にて、2年度目以降に予定している企業調査について、現地での調査協力者と相談するとともに簡単な報告会を行い、企業、産業の研究に携わる他の研究者から今後の研究に際しての示唆を得た。 当初の計画になかった点としては、かねて大企業にほぼ限られていた海外からの資金調達の動きが経営規模の相対的に小さい企業間でも活発化している現状に鑑み、企業の資金調達状況の変化についてデータ収集と考察を行い、成果の一部を後述の報告書所収論文に援用した。本研究課題は、,金融面における企業の成長(例えば、資金制約の緩和による生産規模を拡大するなど)ではなく、技能形成を通じた企業の成長(例えば、設計能力の獲得・向上によって図面レベルでの生産合理化を実現するなど)に焦点をあて、その実態と要因を考察しようとするものであるが、資金調達環境の変化が企業の技能形成への取り組みに与える影響を無視しえないと考えたためである。実際、本研究では企業間関係を通じた技能形成と企業成長にも注目するが、日本では企業間関係を通じてヒト・モノ・カネの3側面すべてで関わりがみられたのに対して、金融面の考察からはインドではヒト・カネを含まないかたちで企業間関係の強化が図られるという傾向がますます顕著になっている傾向がうかがわれた。そうした傾向が技能形成に与える影響を考察するため、今後とも、企業における技能面の蓄積とともに、金融面の変化にも配慮する必要があると認識された。具体的には、この点を踏まえて質問状をさらに再検討し始めた。
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