1.本研究の目的は、従来の人口統計学の手法を拡張し、家計の出生行動に関する経済モデルを用いた新たな将来人口推計のためのプロトタイプモデルを開発し、税、財政、社会保障等の公共政策決定のために推計結果を提供することである。 2.平成22年度の研究においては、日本の将来人口推計を検討するため、東アジアで日本と比較対象となり、参考となる人口推計をサーベイした。ここでは、1人あたりのGDPおよび出生率の概観から、東アジアの中で、日本と似かよった経済規模をもち、日本よりも低い出生率を示している国家である台湾をサーベイした。台湾の行政院経濟建設委員會が2010年に公表した「2010年至2060年臺灣人口推計」によれば、台湾の現在の高齢化率は10%台であり、日本よりも若い人口構造を持った国である。しかし、2010年の出生率の速報値が0.9ときわめて低い傾向を持っていることもあって、今後急速に人口構造の高齢化と人口総数、生産年齢人口の減少が推計されていることがわかった。 3.平成22年度では、主に台湾の人口推計を単体でサーベイしたが、今後は日本の人口推計作業に参考となる点を積極的に取り入れるため、(1)台湾の将来人口推計と日本の将来人口推計を並列し、今後100年間の両国の人口水準と人口構造を対照分析すること、(2)台湾の将来人口推計と日本の将来人口推計において、高位、中位、そして低位の将来パラメータの置き方に関する特徴を浮き彫りにすること、(3)台湾の人口推計のみに固有に設定されている推計手法(モデルの技術的設定)を検討することがあげられる。
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