本研究の目的は、高齢社会における政策決定に用いられる重要な資料としての、将来人口推計について、従来の政府による人口推計結果を別の形で再度検討し、経済的な要素から将来人口推計を見直すことであった。 今年度の研究では、日本の少子化の状況がリアルタイムに確認され、かつ将来の年少人口の状況を予測した「こども人口時計」を東北大学経済学研究科のコンピューターサーバー上に設定した。さらに、これをインターネットを通じて広く社会に公開し、国内の報道各社に取り上げられたほか、海外のメディアにも紹介され、大きな注目を集めた。 さらに、異なる人口推計方法の同士の比較として、東北地方で特にTFR(合計特殊出生率)減少の大きな宮城県について、(1)これまでの出生率の減少トレンドに基づいて将来の出生率を予測する方法と(2)出生を経済行動ととらえ、経済変数を含むモデルで予測する方法を比較した。その結果、比較的短期であれば、これまでの出生率の減少トレンドに基づいて将来の出生率を予測する方法も有用であるが、10年先の出生率を予測する場合には経済変数を含むモデルがやや説明力を持っていることもわかった。このことは、地域の出生率という人口学的な変数が、第1に経済的な現象の一つとして経済学の個人の最適化行動のフレームワークで説明可能であること、第2にその説明モデルを適切に解釈し、プログラムをデザインすれば、地域の人口・少子化問題は、経済政策の対象となりうることを意味し、将来の地域の人口対策に新しい手段を提供するものと言える。
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