研究概要 |
平成23年度においては,理論的な面では経済組織の成立に関する基礎的な考察を前年度に引き続いて行った。その結果,経済システムには大きく分類して,自由な交換に基づいて利得を追求する企業部門,強制的な徴税と平等な公共サービスを背景とした再分配活動を行う政府部門,および利他的な動機に基づいて相互扶助的な活動を行う非営利組織(第三セクター)の3つの部門が存在し,社会全体における個人の属性の分布によって,各部門の構成が決定されるという仮説が得られた。この結果は,本研究の目的の一つである,第三セクターの形成過程のモデル化の途上における重要なポイントである。 実証的な面においては,福祉を中心とした社会サービスの,日本における提供の歴史と現状について資料を用いて分析した。その結果,現状ではそれまで公共部門が提供していた社会サービスが,指定管理者制度等によって企業等民間部門に委託されるといった外部化が進行していること,その一方で委託先として期待されている地域自治組織やNPO等の非営利部門は日本では十分な技術・資金に欠けること,それらの結果として社会サービスの市場化が進行する可能性があることを示した。この結果は,本研究の目的の一つである,各国における政府と第三セクターの行財政関係の把握における,日本の事例として重要である。 よって,上記の23年度の研究成果は,最終年度である平成24年度の研究に向けての重要な仮説と,その裏付けのための資料を提供したと結論付けられる。
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