「遠隔地医療」、「過疎医療」として長く特徴付けられてきた、地域医療は、患者一人あたりの医療サービス供給者数が少なく、患者の医療サービス供給者訪問の費用が高いこと、特に病院を中心とする固定費用の大きな二次医療・三次医療を提供するサービス供給者が十分に規模の経済性を実現できない状況でサービスを供給しており、赤字の状況にあること、病院がソフトバジェット(Soft Budget)の問題に直面していることなどの特徴がある。本研究は、地域医療における主として(公立)病院に関わる問題を理論的・実証的に解明すると同時に、最適な地域医療制度の在り方について明らかにすることを目的としている。 平成22年度は、地域医療制度のモデルを構築するために先行研究のサーベイを行い、予備的な考察を行った。Levaggi(2009)、Gravelle(1999)、Gravelle and Masiero(2000)を含め、本研究に関連する一連の最適費用償還方式の文献をサーベイし、地域医療制度のモデルを検討した。 また、地域医療を考える上で、現実には公立病院が重要な役割を果たしているが、なぜ私的病院ではなく公立病院でなければならないのか、は必ずしも明らかではない。そこで公立病院に関する理論的・実証的な考察を行った。さらに公立病院のソフトバジェット問題について、理論的な研究、Kornai(2009)、Levaggi and Montefipri(2005)を中心にサーベイし、と同時に実証的な研究であるShen and Eggleston(2008)も参考にした。 理論的な考察を行う上で、地域医療の現状の客観的把握は重要であるが、今年度は既存の統計資料に基づいて、整理を行った。
|