平成23年度は、地域医療制度のモデルを構築することを試みた。地域医療は、医療機関と患者の距離の大小、それによる1医療機関あたりの患者数の大小によって大きく特徴付けられ、その差異が、患者の健康及び医療機関の収支状況、診療への努力等の経営に及ぼす影響の地域による差異を生み出すと考えられる。これらの条件の違いは、医療機関のサービスの品質選択、立地に影響を及ぼすと思われる。医療機関の中でも病院の様に、サービスの品質の高い医療機関は、重度の診療を行うことができ、患者の健康維持について大きな役割を担える一方、医療技術投資による固定費用が高くなることで、技術が規模の経済性の要素を持つようになり、患者数の多寡が採算性に影響を及ぼすことになる。このような条件の下で、価格規制のあり方、医療機関の立地のあり方を考察すると、一定の条件の下で、プライマリーケア医システムが社会的に望ましい医療制度であることが明らかになった。ただし、地域に関わる条件によって、この解が最適な解ではないこともあり得、地域の置かれた条件によって、医療制度のあり方は影響を受けることが分かった。 地域医療において重要な役割を果たしている公立病院のソフトバジェット問題について、関連する文献を概観し、日本の公立病院のガバナンス研究の準備を行った。 上記の理論的研究の実証研究の準備のため、具体的な地域を取り上げて、予備的考察を行った。今年度は、都市部、遠隔地、離島地域を同時に保有している鹿児島県を例に取り上げて、データ収集及びその整理、予備的ヒアリング調査を行った。
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