「遠隔地医療」として長く特徴付けられてきた、地域医療の特徴は、以下の通りである。①患者一人あたりの医療サービス供給者数が少ない。②その結果、患者の医療サービス供給者訪問の費用が高い。③特に病院を中心とする固定費用の大きな二次医療を提供するサービス供給者が十分に規模の経済性を実現できない状況でサービスを供給している。④赤字の状況にある。⑤社会保険診療報酬制度、薬価基準制度による価格規制が行われている。⑥二次・三次医療のサービスを中心的に供給している公立病院がソフトバジェット(Soft Budget)の問題に直面している場合が多い。本研究では、地域医療におけるこれらの特徴を踏まえて、価格規制、費用負担のあり方も含めた財源問題について検討し、最適な地域医療制度の在り方について考察を行った。 本研究では、地域医療制度のモデルを考察した。地域医療は、医療機関と患者の距離の大小、それによる1医療機関あたりの患者数の大小によって特徴付けられ、その差異が、患者の健康及び医療機関の収支状況、診療への努力等の経営に及ぼす影響の地域による差異を生み出すと考えられる。これらの条件の違いは、医療機関のサービスの品質選択、立地に影響を及ぼすと思われる。医療機関の中でも病院の様に、サービスの品質の高い医療機関は、高い品質の診療を行うことができ、患者の健康維持について大きな役割を担う一方、固定費用が高くなることで、技術が規模の経済性の要素を持つようになり、患者数の多寡がその採算に影響を及ぼす。このような条件の下で、価格規制のあり方、医療機関の立地のあり方を考察すると、一定の条件の下で、プライマリーケア医システムが社会的に望ましい医療制度であることが明らかになった。ただし、地域の条件によって、この解が最適な解ではないこともあり得、地域の置かれた条件によって、医療制度のあり方は影響を受けることが分かった。
|