研究概要 |
24年度は、日銀の市場との対話とREIT市場を検証した。全体の標本期間は2003年3月31日から2013年1月10日である。分析のために東証REIT指数が、2007年5月31日に最高値である2,612.98ポイントを付けた時点で、標本を2分割する。前半を2003年3月31日から2007年5月31日とし、後半を2007年6月1日から2013年1月10日とする。前半を標本Aとし、後半を標本Bとする。標本Bには2007年8月のBNPパリバショックや2008年9月のリーマン・ブラザースの経営破たん、2010年のギリシャ危機などの信用不安が顕在化した時期を含む。 海外のREIT市場を分析した多くの先行研究と一致する結果となった。株価の上昇がREIT市場に正の影響を与えるとの結果は、富効果が成立し、株価上昇がREIT市場の上昇につながることを示す。標本Aと標本Bを比較すると、正の影響は標本Bの方が大きかった。金利の上昇がREIT市場に負の影響を与えるとの結果は、金利の上昇がREIT市場の下落につながることを示す。標本Aと標本Bを比較すると、負の影響は標本Bの方が大きかった。この点は、標本Bの期間において、リーマン・ブラザーズの経営破たんやユーロ圏における財政危機などの信用不安により、REIT投資法人の資金調達が困難になったことと平仄が合う。REIT投資法人の資金調達は借入金比率(LTV)があるレベルに達するまで、借入という形で行われる。日銀が包括緩和で緩和が長期化するとの時間軸を設定したことやインフレ目標政策の導入を決めたことがREIT市場にとってプラスとなった。
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