本年度は、主として海外直接投資と企業行動に関する研究を行った。この研究では市場構造の違いや海外企業の投資形態の違い、あるいは企業所有の役割などに着目した上で、海外直接投資を行う海外企業の立地選択と各国政府間で展開される租税競争との関係を分析した。 研究の成果として、統合市場において国際的な合弁企業の構築を行う海外企業が、どのような条件の下で投資立地を決定するのかを明らかにした。この研究では、分析に際して国内既存企業に生産効率性の概念を導入し、市場規模が異なる2国で構成された2国モデルを用いて理論モデルの作成を行った。分析によって、国内既存企業の生産効率性と各国間の市場規模の違いが企業誘致を図る政府の租税政策と海外企業の投資に関する意志決定(大国の国内企業と小国の国内企業とのどちらと合弁を行うのか、合弁の際の利潤分配はどのようなものになるのか、合弁企業の生産水準はどのようなものであるかなど)に影響を与えることを明らかにすることができた。なお、この研究は国際的な学術専門誌に掲載されることが確定している。 また、企業所有の役割についての分析も行った。この分析に関しても前述の研究と同様に市場規模の異なった2国が存在する理論モデルを使用している。分析の結果、国内既存企業に対する海外資本の所有割合の変化が海外直接投資を行う海外企業の立地選択と海外企業の誘致を行う政府間の政策競争にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにした。今後、この研究成果を論文にまとめ、国際的な学術専門誌に投稿する予定である。
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