小規模銀行の貸出行動が地域の小規模企業の倒産比率に影響を与えたかどうかを分析し、小規模銀行の不良債権比率が高いほど個人企業の倒産比率が低いという実証結果をえた。過去の実証研究は、小規模銀行が小規模企業の借入によい影響を与えていることを論じている。しかし、そのチャネルは明らかではなかった。過去の理論的分析では、銀行の貸出関係が企業の投資プロジェクトの成功確率を高め、資金の利用可能性や貸出金利などに影響を与えることが主張されてきている。したがって、小規模企業の貸出行動が倒産確率に与える影響についての実証を与えることが重要であったが、そのデータの利用不可能性から、そうした実証分析はなかった。私の研究は、都道府県別の企業規模別の倒産比率を利用することによって、このデータの問題を解決した。 まず、Boot and Thakor (2000)のモデルを利用して、小規模銀行がリレーションシップ貸出を行うと、その地域の小規模企業の倒産比率が低下するという式を示した。もし小規模銀行が小規模企業のリカバリー確率を高めることに比較優位をもっていれば、このリカバリー確率が高い県ほど、小規模企業の倒産比率は低くなる。ハウスマン・テイラーによるパネルデータモデルによって、回帰分析を行ったところ、小規模銀行の不良債権比率(破綻先債権比率を除く)が高い県ほど、個人企業の倒産比率が低いという結果がえられた。これは、小規模銀行の比較優位仮説を支技する。
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