研究概要 |
本研究の目的は,地方自治体の行財政運営の効率性に関する現状分析を踏まえ,将来の地方自治体間の行財政格差および地方自治体の財政破綻ついて理論・数量的に分析を行うことである。そのために,本年度は三位一体改革あるいは市町村合併が市町村の行財政運営上においていかなる影響,問題をもたらしてきたかについて,日本全国の市町村にアンケート調査を行った。全国1700余りの市町村の中で,東日本大震災の影響がある市町村を除いた約1600の市町村のうち,約800の市町村から回答が得られ,その回収率はおおよそ50%に達した。したがって,この回答から得られる情報は,おおよそ日本の市町村の全体的な傾向をとらえているものと判断できる。このデータについては既に集計を終わっており、統計処理・分析を行なえる状況となっている。なお,このアンケートは平成22年度末において実施する予定であったが、東日本大震災のために,約半年実施を延期している。 上のような状況から,上記の財政運営に関するアンケートは東日本大震災の影響を受けた市町村に対して行うことは適切ではない。むしろ,それら市町村が東日本大震災の際にどのように住民とのコミュニケーションを行い,また,復興に向けてどのように考えているかについて調査を行う方が,現在の日本,そして将来に残すべき知見の一つとして重要であると判断した。そこで,上記の財政運営に関するアンケートに加えたかたちで,東日本大震災に関するアンケートを当該市町村に向けて行った。現在はそのデータの集計を行っているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の本来の予定と対照すると,やや遅れている状況といえるかもしれない。本来の予定では,昨年度においてアンケート調査がなされ,本年度はその統計処理を行っていることになっていたためである。しかし,上でも述べたように,東日本大震災によりアンケート調査を延期するのが適切と判断した。そのため,その分の遅れが生じたものと考えている。したがって,総合的に鑑みた結果,(2)おおむね順調に進展している,と評価をした。
|
今後の研究の推進方策 |
上にも述べたように,東日本大震災の影響により,計画にやや遅れが見られている。そのため,本年度は財政運営に関するアンケートおよび東日本大震災に関するアンケートの記述統計をまずまとめ,それを報告書として形にすることをめざす。それと並行し,時間をできるかぎり効率的に使いつつ,アンケートのデータを用いて多変量解析を行う。この分析により,前者のアンケートからは,三位一体改革以前に予想されていた行財政改革が実際に進展しているのか,また,市町村合併によって期待されていた効果が実際に現れているのかについて確認する。また,後者のアンケートからは,東日本大震災の影響を受けた市町村の現在の状況をまとめるとともに,将来の日本の市町村レベルにおける災害に対する姿勢に関して一定の示唆を得ることを目標にする。
|