過去 20 年以上の間における国際金融上の顕著な特徴は、 (i)双方向での国際資産取引が爆発的に拡大したこと、(ii)グロスの資本フローが流入および流出ともに著しく増加したこと、および(iii)グロスの対外資産・負債が、両建てで飛躍的に拡大したことである。この新しい定型化された事実は、とりわけ先進工業国において顕著に観察されてきた。その結果、アカデミズムにおける対外インバランスの分析も、ネットのフロー分析からグロスのストック分析が重視されるようになってきた。 とりわけ一国の対外バランスシートとしての国際投資ポジション(IIP)が肥大化したことから発生する「評価効果」に注目する研究が現れてきている。例えば、過去の対外調整に関する過去の研究は、為替レートが経常収支調整に及ぼす伝統的な「貿易経路」を重視してきた。しかし、近年の研究は、ストックとしての対外インバランス調整に及ぼす追加的な「評価経路」が重視され始めている。 本研究の目的は、 2007 年以降の世界金融危機を挟んだ 1995 年から 2010 年までを対象とし、日米の IIP 構造や対外収益率格差の違いなどを分析することによって、日米の評価効果が完全に非対称的であることを示すことである。さらに、貿易収支の縮小と所得収支の拡大という経常収支構造に転換しながらも、今なお米国とは対照的な IIP 構造を持つ日本にとっての示唆を考察する。
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