研究概要 |
本研究は事例ベース意思決定理論をファイナンス分野での資産価値評価へ応用することによって、新たな知見を得た上で、実務への応用可能な評価式を導出することを目的としている。本年度は、実務応用上の観点から、企業財務データを収集し、そのデータを元に、事例ベース意思決定理論に基づいて企業倒産確率の推定を行うことを試みた。リーマンショック以降の企業業績の悪化から、東証1部上場企業においても、倒産する企業が出現していることを鑑みるに、適切な企業倒産確率の推定と、それに基づいた、企業資産価値評価は、社会的に非常に要請が高く、本研究の遂行と進展は非常に有意義であるといえる。 本年度、本研究で行った実証分析では、倒産確率の推定を,既存のロジットモデルと事例ベース意思決定理論に基づくオリジナルモデルとで行い,どちらの結果が倒産確率の推定においてより説明力が高いのかを比較した。本年度、本研究での実証分析の結果は,倒産確率の推定においては、本研究での事例ベース意思決定理論に基づく倒産確率推定モデルは、ロジットモデルとほぼ同様の推定あるいは下回る推定を行い,総合的に見ると事例ベース意思決定理論に基づくモデルの説明力はロジットモデルよりやや低いという結果になった。しかし,本年度行った実証分析では、使用する財務指標をロジットモデルよる推定が優位になるように選択していたので、このことを考えると,事例ベース意思決定理論に基づく倒産確率推定モデルの使用に一定の意義があるとも考えられる。したがって,今後、事例ベース意思決定理論に適した変数選択の方法を考察することで,事例ベース意思検定理論に基づくモデルによる倒産確率推定のパフォーマンスを向上できる可能性があると考えられる。次年度は、この考察を行い、さらには、最近の行動経済学の発展を取り入れて不確実性評価における主観的生起確率の新たな導出方法を追及する予定でいる。
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