リーマンショック以来の世界的不況の甲にあって、金融祝制を通じた金融規制のありかたが再び脚光をあびつつある。ところが、この問に答えるべく用意されているわが国の基礎研究は意外にもわずかである。どのような規制がどのような効果を生むのかを予測するだけの基本的な研究が我が国おいて不足しているのである。そこで、本研究では1)これまで利用が困難であっだ『全国消費実態調査』、『貯蓄動向調査』、『家計調査』の個票データについて2次利用の申出をすることにより、これを取得し、2)この信頼性の高いデータを用いて家計の資産選択を律する方程式を推計し、3)配当税率が家計の投資行動に影響を与えているのか、また、2003年の新証券税制および65歳以上のマル優廃止は効果があったのか等について分析を進めていく。さらに、4)これらの調査が全国的な規模で行われていることを利用して、家計の資産選択行動に地域差が見られないか、また、5)税収と家計の資産選択行動の国家的、地域的関係を析出していく。 2010年度は上記三つの基本統計の二次利用申請を行うとともに、具体的な解析で応用を考えているベイズ統計、中でも、近年脚光を浴びているMCMCのプログラミングに精力を注いだ。データ取得にかんしては、東日本大震災の関係もあり、データ開示が大幅に遅れ、5月の段階でようやく、『全国消費実態調査』の提供を受けたばかりである。残り二つの統計の開示を待って、具体的な推計作業に入る予定である。
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