研究課題/領域番号 |
22530316
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研究機関 | 公立大学法人北九州市立大学 |
研究代表者 |
林田 実 公立大学法人北九州市立大学, 経済学部, 教授 (20198873)
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研究分担者 |
大野 裕之 東洋大学, 経済学部, 教授 (50285459)
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キーワード | 財政学 / 金融税制 / 資産選択 / 基幹統計 |
研究概要 |
本年度は、家計調査貯蓄負債編の、2002年3月~2003年12月までの月次個票データを用いて、2003年の新証券税制の効果が家計の株式および株式投資信託(以後、株式投信と呼ぶ)保有高にどれほどあったのかを探った。具体的には、家計の実質株式・株式投信保有高(名目保有高/TOPIX)を目的変数とし、株式リスクプレミアム、家計の金融資産残高、年齢、持ち家ダミーを説明変数として、回帰モデル、トービットモデル、サンプルセレクションモデルの3つのモデルで詳細に分析した。その際、新証券税制の効果は定数項ダミーおよびリスクプレミアム係数シフトで計測した。その結果、(1)新証券税制の効果の有無については、上記三つのモデルで定数項ダミーおよびリスクプレミアム係数シフトに有意に「効果有り」と現れた。また、その量的効果は、トービットモデルの推定結果で見ると、(2)定数項シフトに反映されたもので、1家計あたり約26.8万円の株式・株式投信残高の増大を意味し、全家計では、約9.1兆円の残高増となる。他方、(3)リスクプレミアム係数シフトに現れる残高増は0.5兆円に満たない。また、(4)資金循環表を用いると、2003年第1四半期から同第2四半期にかけての家計の株式・株式投信残高増は約8.7兆円であるから、この間の残高増は定数項シフトによって予測された残高増にほぼ相当する。(5)新証券税制による税制改革が、同時期の家計の株式・株式投信残高増の大部分を説明することが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要ターゲットである、『家計調査貯蓄負債編』の主要な解析が終了し、投稿論文が完成した。
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今後の研究の推進方策 |
家計の金融資産の中でどの種類の金融資産から株式・株式投信へ資金が移動したのかについて問うことが今後の主要な課題である。具体的には、『貯蓄動向調査』の個票データを『家計調査貯蓄負債編』の個票データとプールし、SURモデル等による分析を試みていきたい。
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