本年度は、家計調査貯蓄負債編の、2002年3月~2003年12月までの月次個票データを用いて、2003年の新証券税制が家計の金融資産のポートフォーリオ、すなわち、株式・株式投信、預金および債券の保有高という3つの目的変数に対して、どのような影響を与えたのかを探った。説明変数としては、各資産のリスクプレミアム、家計の金融資産残高、年齢、持ち家ダミーを用い、そこに、2003年4月ダミーを、定数項シフトおよびリスクプレミアム係数シフトとして、入れることによって、新証券税制がどの目的変数に影響を与えているかを分析した。モデルとしては、はじめに、Tobitモデル、SURモデル、多変量プロビットモデルを用いた。しかしながら、Tobitモデルは、各目的変数の決定式の誤差項の相関を考慮していないこと、SURモデルは、保有高0を適切に処理できていないこと、多変量プロビットモデルは連続型データを2値データに変換するために、情報を有効に活用できていないという弱点が存在する。そこで、SUR with TobitモデルをMCMC推定することによって、最終的な推計式を得ることにした。それによると、株式・株式投信の保有高は、定数項シフトおよびリスクプレミアム係数シフトが有意であった。それに対して、預金および債券にはシフトが見られなかった。したがって、家計のポートフォーリオ全体を考慮しても、新証券税制が株式・株式投信にのみ、プラスの影響を与えたことが確認できた。
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