研究概要 |
今年度は,本研究課題の1年目として基礎的研究を行い,その成果を公開した.具体的には,以下の通りである. 1.本研究全体の基礎となる「エントロピー最大化原理による予測分布のリスク中立化」の多次元化のための基盤研究を行った.特に,オリジナルな確率分布において2つのリスクが独立であっても,提案するリスク中立予測分布のもとでは必ずしもそれらは独立とはならないことを示した.さらに,独立となるための条件を求めた.また,提案するリスク中立予測分布とエッシャー変換との関係について考察した.また,これらの結果に基づき,我が国におけるリバースモーゲージ証券化の評価スキームを考案した.以上の成果の一部は,2010年7月にシンガポールで開催された「世界リスク保険経済学会」(World Risk and Insurance EconomicsCongress)において"Anumerical Bayesian technique for pricing insurance and financial risk with applications to longevity-linked security valuation"というタイトルで講演発表した.これらは,多変量ベイジアン・プライシングの理論的基礎を与えるものであり,具体的なモデル構築に向けた重要なステップである. 2.金融保険商品のリスク要因である死亡率,住宅価格,為替レート,物価指数の時系列モデリングに関して基礎的な研究を行った.死亡率についてはLee-Carterモデルの拡張としてのダイナミック・ファクター・モデルについて考察した.また,住宅価格についてはダイナミック・リニアー・モデルについて考察した.これらの時系列モデリングの基礎研究の一部は,2011年に刊行予定の「経済時系列ハンドブック」(朝倉書店)に所収される「数理ファイナンスと時系列」,「為替時系列」という2つの論文としてまとめた.
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