採択の通知は半年遅れの10月にもらったが、既に、他予算を用いて日本の株式流通税が株価収益率のボラティリティに与える影響の分析を始めており、GARCH型モデルの枠組みで、1999年の有価証券取引税の廃止と、2003年の新証券税制による「見なし課税」廃止の前後で、ボラティリティに有意な低下が認められるとの結果を得ていた。研究期間開始後には、そうした第1稿を共同研究者と協議しつつ改訂し、11月の日本応用経済学会において報告した。中村保・神戸大学教授と福重元嗣・大阪大学教授から、それぞれ、(1)流通税がボラティリティをどのように変えるかの理論的な考え方を採り入れるべし、(2)推計に当たっては、税制変更ダミーは切片の身ではなく、ボラティリティのAR(1)項にも加えて分析を行うべしとのコメントをもらい、年度いっぱい、それを反映した改訂を進めた(現在も進行中)。 また、アジア・太平洋諸国の流通税を取り上げ、取引高とボラティリティに与える影響の分析を始めた。当初は、取引高、ボラティリティの順で進める予定であったが、前者の分析で予定していた手法(各国と米国市場の両方で上場している銘柄の、株価変動率の、税制変更時前後の挙動を比較する)に必要な、銘柄の同定が想定外に困難であることが判明したため、順番を変えて、ボラティリティの分析を先行させることとし、前述の日本の分析と同様の分析を、年度いっぱい進めた(現在も進行中)。 更に、平成23年度に交付される補助金を前提に、為替分析を行う上で必要なデータの探索も行った。いわゆるティックデータを利用するため、この探索は平易ではなく、多くの時間を費やすことになった。その結果、Thompson Reuter社に必要なデータがあることがわかり、それを元にどのように分析を進めるべきか、関連する先行研究をもとに共同研究者と討論し、大凡の方向を確定した。
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